ガサガサ通信 vol.9 〜ミズウオという深海魚と、その胃内容物〜

駿河湾 冬の風物詩といえば、ヤリイカ船が沖合に並ぶ景色やタチウオ釣りが思い浮かぶだろうか。それだけではない。実は、この日本一深い湾に接する長い砂利浜には、条件が揃うと様々な深海生物が打ち上がることでも知られている。

寒い季節、この海域に起こる現象のメカニズムは冬春期の季節風が大きく影響しているという。他にも「低気圧で雨が降る少し前が良い」「潮の干満差が重要」「向かい風爆風が最大のチャンス」など、人それぞれ様々なチャンスポイントがあるようだ。

まさに今がシーズン真っ只中と言うことで、目当てのフィールドに足を延ばすことにした。夜間採集になるため、用意した道具はヘッドライト、長靴、そして防寒用品。波打ち際を探索するので、ライフジャケット等 救命用品の携行があると尚安心できる。

明るい時間帯でも深海生物は打ち上がるが、今回は夜間採集を選んだ。理由は、この時期は夜の方が潮が大きく引くことと(満潮時に水際を泳ぐ個体が、潮が引くことにより陸地に取り残される可能性を考えて)、明るくなると現れる海鳥たちとの競争を避けるため。

ライトで波打ち際を照らし歩き始めてまもなく、逆に向けて歩き出した知人から「発見した」との一報が入った。駆けつけると、そこには1メートルを超える巨大な深海魚が足元に横たわっていた。

発見直前まで生きていたであろうミズウオ。この鮮度なら食べることも可能であろう。図鑑で見るだけでは感じ取れない鮮やかな色彩が印象的。

大きな口と鋭い歯。まるでカッターナイフのような切れ味で、軽く触れただけで指先を深く切り裂いた。

何を食べているのか?胃内容物チェック

胃袋が異様に張っていることに気がついた。何が入っているのだろう。もしや深海魚が?深海魚を発見した喜びに被せて、更に新たな深海魚が出る可能性があるとは、ワクワクさせてくれるなあ。

腹を裂くと、黒い幕に覆われた胃内容物が現れた。チョウチンアンコウやリュウグウノツカイ、シーラカンスの稚魚が出てくる可能性だって無くはない!?

フグが次々と出てきた。未消化で形がわかるものは、コモンフグ(有毒)と思われる魚とシロサバフグと思われる魚。

ウミヘビ科と思われる生物も。

珍しい深海生物かも?

丸呑みするとこんな状態か。口が大きく開くのは大きな魚を捉えるためか。海の中でこんなことが起こってると想像すると面白い。

痩せた個体の胃内容物に衝撃!

新たに発見したミズウオ。表面が乾き始めているので、打ち上げられてから2〜3時間ほど経過してそうな印象。そして1個体目に比べて異様に痩せ細っているようにも見える。

胃袋の中は、なんとゴミ。

深海魚の胃の中から、セロハンやプラスチックゴミが出てきた。

もしこの魚が弱った原因が、エサと間違えゴミを誤食したことに関係していたら…。生き物を通して、最も深刻な環境問題と言われる〝海ごみ問題〟を目の当たりにすることになった。

これをどうやって食べたの?気になる胃内容物

また新たな個体に遭遇。打ち上げられてから時間が経っていたが、遠目に見えた時から、ある違和感を感じた。

双頭のミズウオ!?いや、よく見るともう一つの顔が胃を突き破っていた。

引っ張って見ると、全長1メートルほどのミズウオから、ほぼ同サイズのタチウオ科の魚が現れた。黒い膜はミズウオの胃袋。こんな長いモノをどうやって丸呑みしたのか。

胃袋の中からは、ルアー(疑似餌)も出てきた。

また別の個体は、イワシを食べていた。

今回のタイミングは、ミズウオ以外にイワシやクラゲが数多く打ちあがっていた。これも深海生物を探す一つのヒントになるだろう。

記事ではミズウオが次々と現れたが、変な錯覚を感じさせてはいけないので現実を書く。実際のところ夜の海岸を20キロ近く歩いたのではないかと思う。夕食を食べてからスタートしたフィールドワークも、駐車場に戻る頃には夜が空けていた。普段から生物採集や運動をしてないと、全身筋肉痛になること間違いなしである。

以前、別のタイミングでこの現場に訪れた時には、虫の息ではあったがまだ生きているミズウオにも会うことができた。ちなみにその個体は持ち帰って刺し身で食べてみたが、ミズウオという名に恥じぬ水っぽさで、あまり旨味は感じないなという印象を受けた。※個人の感想です

今回、胃内容からは完璧に深海魚と言い切れる魚が出てこなかったが、今後も観察は続けていくつもり。いつか驚きの発見をして発表できたら幸い。この記事を見てワクワクし、深海生物を探しに行こうと思った方が少しでもいたら嬉しいと思う。

「面白い生物発見したよ!」というご一報お待ちしております!

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